第213回国会審議にて 農業用ドローンに関する法案が可決して法律に(これ勘違いしないでね!!)

「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案」が、
衆議院議会審議で可決、参議院議会審議で可決された事により、農業用ドローンにおける飛行申請作業について、無くなっちゃうの?簡略化される?という一部の情報が流れていますが、詳細を確認のうえ、ご説明いたします。これも早合点しちゃいけません。

そもそも審議されるとは、本会議で法律案などを議論すること、また、法律案などを国会で議論する過程そのものをいいますが、今回の第213回国会審議にて、5月23日衆議院、6月14日参議院と順調に可決された「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律案」(令和六年法律第六十三号)についての中身を確認していきますと次の通り

この法律の目的
(目的) 第一条 この法律は、農業者の減少及び高齢化の進展、農業の分野における情報通信技術の進展、食料に対する国民の需要の高度化及び多様化その他の農業を取り巻く環境の変化に対応して、農業の生産性の向上を図るため、スマート農業技術の活用及びこれと併せて行う農産物の新たな生産の方式の導入並びにスマート農業技術等の開発及びその成果の普及を促進するための措置を講ずることにより、スマート農業技術の活用を促進し、もって農業の持続的な発展及び国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

この背景として、今後20年間で、基幹的農業従事者の約1/4(116万人⇒30万人)にまで減少が見込まれることが大きく影響しており、農業の持続的な発展と安定供給を考えた時には、スマート農業技術等の開発・普及を図る事としています。この中でのスマート農業技術とは、農業機械を遠隔操作により通信で操作し、農作業の効率化、農作業における身体の負担軽減を図り、作物からの情報を得て農業の経営管理の合理化に繋げるものとしている。これは、まさに農業用ドローンでのソリューションを示唆しています。そしてこの法律の中には「生産性革新事業活動」なるものが定義されとおり、これはスマート農業技術を活用して行う農産物の生産、又は農業の経営管理とある。然るに農業用ドローンによるソリューションを実施する事は「生産方式革新事業活動」になると解釈することができる。

次いで文面には、この「生産方式革新事業活動」を農業者に対し国が啓発、農業者は、自ら活用するスマート農業技術の性格、生産する農産物の特性等に応じて、生産方式革新事業活動に主体的かつ積極的に取り組むことにより農業の生産性の向上を図ることを旨として、その促進が図られなければならないとあるので、積極的に取り入れなさいと、半ば強制的な事として解釈することができます。

そして、ここからがポイントです。このスマート農業技術を採用した「生産方式革新事業活動」を行おうとする農業者等は、単独又は共同して、「生産方式革新実施計画」を作成し、農林水産大臣に提出しなければならないとあります。この内容は、生産方式革新事業活動の用に供する設備等(施設、設備、機器、装置又はプログラムをいう。)の導入の記載の他、航空法に関する第百三十二条の八十五第一項第二号に掲げる空域

に加え、航空法第百三十二条の八十六第二項第一号から第三号まで、第五号又は第六号に掲げる方法(いわゆる特定飛行)において、飛行させる行為、当該行為を行う空域及び期間並びに当該行為に使用する無人航空機を特定するために必要な事項 の記載とあります。これは一年間の「包括飛行申請」内容を示唆しており、この「生産方式革新実施計画」にそれが記載され申請された場合に、農林水産大臣は国土交通大臣にあらかじめ協議し同意を得るとあり、国土交通大臣は、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれる恐れが無いと認めるときは、その同意をするものとする。となっている。

この内容を咀嚼すると、農業用ドローンについての「包括飛行申請」については、今後提出方法、提出先が国土交通省から農林水産省に変更となる可能性があるということになり、農業用ドローンによるソリューションの実施については、この法案により、農林水産省がワンストップで面倒を見ると言ったところではないだろうか。
(※「生産方式革新実施計画」の記載申請はDIPS2.0のような電子申請なのかは不明、また申請をする農業者等に、スマート農業技術活用サービス事業者(=農業用ドローン業務請負者)も含まれている)

昨今、農業用ドローンにおける事故については増加しており、飛ばす側、使う側の知識・技量は、一定以上の水準を満たさなければいけない現状に、「包括飛行申請 」を省くという緩和措置が講じられる事では無いことを改めて示したい。

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